事例紹介:三菱マテリアル株式会社様 後編

インタビュー

このプロジェクトを指揮した三菱マテリアル株式会社 情報システム企画室 室長補佐の甲元宏明様にお話を伺いました。

★今回のプロジェクトについて

1.今回のプロジェクトについて、プロジェクトを指揮していた立場としてのコメントをお願いします。
(工夫した点・苦労した点など)

1.

  • 短期間で目に見える成果をだして、関係者に納得させること
  • これまでの考え方を大きく変革した取り組みだったので、その根本思想(なぜこのような取り組みをしているのか?)を常に関係者に伝えること
  • 権限委譲が原則だが、元の階層的管理に戻ろうとする場合も散見されたため、原則を逸脱しないように常に注意を払った

以上ですが、どれもプロジェクト初期の問題で、早期成果を獲得したあとは円滑に進みました。

2.今回の設計開発において、UMLがなければ今回のような成功はあり得なかったと思いますか?

2.はい。概念モデルや状態遷移モデルなど、UMによるビジネス分析・ビジネスプロセス記述なしでは、うまく行かなかったと断言できます。

3.UMLツール選択時の選択基準と、弊社製品Enterprise Architectの選定理由を可能な範囲で教えてください。また、比較したツール名を教えてください。

3.

  • 選定理由
    • 当プロジェクトに必要十分な機能
    • 他社ツールに比べて操作レスポンスが優秀
    • ライセンス体系が安価
    • サポート体制が秀逸

  • 比較した製品
    • Jude
    • PatternWeaver
    • Rose

★Enterprise Architectについて

1. Enterprise Architectを導入する初期の段階で苦労した点はありましたか?

1.特にありませんが、あえて言うなら、通常のWindowsアプリケーションとLook & Feelが異なるために最初とまどう人が多かったことです。(しかし使ううちにすぐに慣れましたが。)

2. Enterprise Architectを利用する上で、決めた運用ルールはありますか?

2.ルールで縛らない事が本プロジェクトの基本コンセプトでもあるので、ほとんどルールは存在しません。下記のようなものがあるだけです。

  • すべてのプロジェクト関係者が利用するので、ファイル更新ルールを厳格にした。
  • ER図など更新に関わる人間が非常に多いモデルは、作成更新者を固定した。

3. Enterprise Architectを利用して作成したUMLモデルについて可能であれば以下の点について教えてください。

3.

  1. EAPファイルの総数

    1プロジェクト当たり、約10個です。

  2. 代表的なEAPファイルについて、要素やパッケージの個数

    以下の数値は、最も大きなファイルの場合です。
    • 要素数:7,400
    • パッケージ数:90
    • ダイアグラム:410
    • ユースケース:400


  3. 利用しているUMLのダイアグラムおよびその作成の順序

    1. ビジネスプロセス図
    2. ユースケース図
    3. クラス図(概念モデル)
    4. アクティビティ図(必要に応じて)
    5. ステートマシン図(必要に応じて)

4. Enterprise Architectの機能のうち、実際の設計開発において便利であった機能とその理由・活用法を教えてください。

4.

  • RTF作成機能:代理店などの社外の関係者にモデルを開示する際に有用でした。
  • ユースケース測定機能:サブプロジェクト毎・イテレーション毎などの生産性の定量評価や新規プロジェクトの見積時に有用でした。
  • MindMap連携機能:MindMapで作成した種々のリストを取り込むのに有用でした。
  • Errikson-Penker図のサポート:ビジネスプロセスモデリング時に有用でした。
  • Copy&Paste時の新規要素とリンクの区別:概念モデルのような上流系のモデリングの場合、同じ名前のオブジェクトでもリンクしていない方が便利なときが多いので。

5. Enterprise Architectを実際にご利用になって、不満である点や実際の設計開発において困った点を教えてください。

5.

  • Undo機能が貧弱
  • 大規模モデル時のレスポンス低下が著しい
  • ノート機能が貧弱

(※:下記「弊社の言い訳」もご覧ください。)

6. Enterprise Architectの機能のうち、他のツールより秀でているとお考えの点がありましたら、教えてください。

6. 以下の機能は他のツールにはない機能であったり、あるいは大きく優れていると感じました。

  • RTF作成機能
  • ユースケース測定機能

7. Enterprise Architectの今後の活用方法・活用計画について教えてください。

7. ユーザ部門でも自律的・自発的にビジネスモデリングができるようにしたいです。

8. アジャイル開発という視点から、Enterprise Architectが役に立ったこと、あるいはEnterprise Architectに不足していることなどはありますか?

8.
(役に立ったこと)
バージョン管理機能を使って、イテレーション毎のユースケース管理が出来ました。

(期待すること)
ユースケース単位で進捗管理が出来ると嬉しいですね。

★弊社コメント

常識的に考えれば「不可能」な設計開発を、アジャイルという手法と並々ならぬ熱意・意欲をもって実現したプロジェクトです。積極的に新しい技術や考え方を取り入れ、うまく自分達のやり方に合うように利用していったという感じを受けました。

また、その中で弊社ツールが活用されたことは喜ばしい限りです。インタビューの中にあるように、Enterprise Architectは多少癖のある製品ですが、その機能や費用対効果は、その癖を上回るだけの評価をいただけていることが確認できました。

甲元様、ありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。

 

※Q5についての弊社の言い訳:
「Undo機能」は最新のバージョン6.5で改善しました。また、「レスポンス低下」は、上記プロジェクトの規模を考えると、EAPファイル(Enterprise Architect既定のファイル形式)での運用であれば、性能劣化は避けられません。今回の例ではコーポレート版を利用されていますので、OracleなどDBMSにプロジェクトを配置するほうがよいと思います。