課題管理システム(ITS)との連携
課題管理システムとは?
課題管理システム(ITS: Issue Tracking System)とは、「チケット」と呼ばれる単位で管理される課題の管理に利用するシステムで、RedmineやJIRA等が有名です。バグ管理システム(BTS:Bug Tracking System)やチケット管理システムと呼ばれることもあります。設計開発で発生するさまざまな問題(作業やバグなど)について「チケット」を作成し、そのチケットの担当者・履歴・状況などを把握するためのシステムです。
Team Foundation Server(TFS)など、統合的な設計管理支援システムでも、この課題管理システムと同様の機能を提供するものもあります。
課題管理システムとEnterprise Architectとの連携
課題管理システムは、多くのソフトウェアの設計開発で利用されています。つまり、同じくソフトウェアの設計開発で利用されるEnterprise Architectと連携ができると良い場面があります。2つの具体的な例を紹介します。
設計時の課題をチケット化して管理
Enterprise Architectで設計を行っていると、内容が不明な点・追加の作業・すぐには対応しない点など、さまざまな「課題」が発生します。こうした課題を管理するために、課題管理システムはとても有用です。しかし、2つのツールを併用する場合には、次の問題点があります。
- Enterprise Architectはスタンドアロンのアプリケーションであるが、課題管理システムはWebベースのシステムなので、関係する情報が別々の場所に格納され、設計情報と課題の結びつけや追跡が容易ではない
- Enterprise Architectの設計情報を見ても、課題の存在や状況がわからない
こうした問題点については、この2つのツールを連携する連携製品で解決できます。この連携製品を利用した場合の手順は以下のような流れになります。
- Enterprise Architectでモデルを作成する
- モデル作成中に「課題」が発生した場合、チケットを示す要素(以下、チケット要素)を作成する
- チケット要素を、チケット管理システムに登録する
(1つずつでも、まとめてでも登録できます) - チケット要素をダブルクリックしてWebブラウザを起動し、担当者の設定や状態の変更を行う
- 必要に応じてチケット管理システム側の変更を「同期」し、モデル側に反映する
上記の概要を図に示したのが、以下の図になります。
チケットを作成する場合には、以下のように関係する要素と結びつけて作成します。Enterprise Architectのクイックリンク機能で簡単に作成できます。
チケットの状態と結びつけて色を指定しておくと、以下の図のように、Enterprise Architectの図内で、要素の色によってチケットの状況を把握できます。
このようにすることで、設計内容から簡単にチケットを作成し、チケットとの関係を可視化し、チケットの状況を図でも把握ができます。
作業項目を設計情報に割り当て
もう一つの連携の例として、先に課題管理システムで作業を定義し、その作業を元に設計作業を行う際に有用な方法があります。WBS(Work Breakdown Structure)の手法を利用して作業項目を定義し、その作業項目にしたがってEnterprise Architectで設計作業を進める場合がその一例です。
あるいは、バグや改善などのさまざまな項目について、まずは課題管理システムに項目を入力し、その項目を元に設計作業を修正するような場合もあります。いずれにしても、先に課題管理システムでチケットを追加し、そのチケットを担当者に割り当て、その担当者がEnterprise Architectの設計情報を修正するという流れです。
Enterprise Architect上でチケットを要素として表現することで、以下のような流れで連携できます。
- 課題管理システムに登録されたチケットを、一括でEnterprise Architectの設計モデルに取り込む
- 取り込んだ、チケット要素のそれぞれについて、関係するダイアグラムに配置し、関係する要素と「追跡」などの関係で結ぶ
- 設計を修正・変更する担当者は、結びつけられているチケット要素をダブルクリックしてWebブラウザを起動して詳細を確認し、変更を実施する
- 変更が完了したら、結びつけられているチケット要素をダブルクリックしてWebブラウザを起動し、状態を変更する
- 特定のチケットに対する変更部分などを確認したい場合には、該当のチケットの番号で検索し、関連するチケット要素を探す
また、この例のような場合には、Enterprise Architectの「関係マトリックス」機能も有効です。それぞれのチケットに対して、設計情報のどの要素に影響するのかを定義・把握できます。例えば、次の例では、「画面の表示速度を改善する」というチケットについて、関係する設計要素が「コンポーネントA」と「コンポーネントC」であることがわかります。このようなマトリックス形式では、対応範囲の確認や抜け漏れを防ぐために有効です。また、逆に「コンポーネントC」の担当者は、3つのチケットを考慮して改善設計を行う必要があることも把握できます。
これらの関係の情報は、上記の手順の2番(取り込んだ、チケット要素のそれぞれについて、関係するダイアグラムに配置し、関係する要素と「追跡」などの関係で結ぶ)を実行するとマトリックスに表示されます。また、マトリックス上で関係の追加・削除を行うこともできます。
課題管理システムとの連携製品
上記のような内容を実現するためのEnterprise Architectの既存の連携製品として、Enterprise Architect-Redmine連携アドインがあります。
Redmine以外の課題管理システム、例えばJIRA・Team Foundation Server(TFS)・Tracなどへの対応につきましては、個別開発にて対応しております。詳細につきましては、遠慮なくお問い合わせ下さい。