モデルのトレーサビリティ
作図ツールと、Enterprise Architectのようなモデリングツールにはどのような違いがあるのでしょうか。大きな違いの1つとして、作図ツールで作成した図は単なる絵であるのに対し、モデリングツールで作成する図は設計モデルのある一部分を表現したものであり、設計モデル間にさまざまな関係を定義・保持できる点が挙げられます。「作成する図をつなげることができる」と言えるかもしれません。つながりがあることにより、例えばある図に配置されている要素を変更する場合に、「どの要素に影響を与えるのか」「その要素はどの図で利用されているのか」という影響範囲を追跡できます。作図ツールではなくモデリングツールを使うことのメリットの一つは、この「トレーサビリティ」にあります。
例
例えば、次のようなSysML 1.5の図で考えます。左上のブロック定義図・右上のアクティビティ図は、それぞれ作図ツールでも作成できます。設計としては、アクティビティ図に配置されているパーティション(枠)は、青線のようにブロック定義図のブロックと結びついています。そのパーティション上にアクションを配置すると、そのアクションは結びつくブロックが実施する機能・処理であることを示します。
このようにして定義した内容について、下の図の下部にあるマトリックスを利用することで、それぞれのブロックがどの機能を実行するかをまとめて把握できます。まとめて把握できることで、個々の図としては問題ないとしても、全体としてみると同じ機能が異なるブロックで処理されている、などの矛盾を見つける助けになります。
また、「特定の要素がどの要素の影響を受けるのか」「どの要素に影響を与えるのか」は次の図のようなマップで把握できます。
もちろん、これらの関係を定義するのは、設計者自身です。しかし、実際に設計を行う際には、頭の中でこうした関係を考慮し、漏れ・抜けがないように作図しているはずです。頭の中で考えたものを関係として実際にモデルに記録することで、後日に漏れ・抜けがないかどうか確認ができます。また、変更設計時に影響範囲を確認できるようになります。
トレーサビリティに関する道具(機能)
Enterprise Architectには、トレーサビリティに関するさまざまな機能があります。しかし、Enterprise Architectは汎用的なツールであり、ソフトウェアやシステムの設計以外にもさまざまな用途で活用できます。そうした背景もあり、標準機能では得られる情報だけでは、ソフトウェアやシステムの設計においては十分ではありません。
スパークスシステムズ ジャパンでは、日本の現場で実際にEnterprise Architectを利用している方のさまざまな声を元に、作成したモデルをさまざまな観点で分析できるトレーサビリティ関連のアドインを提供しています。
これらのアドインは「動作期間限定アドイン」です。スパークスシステムズ ジャパンからEnterprise Architectを購入した場合、サポートが有効な期間は無料で利用できます。
これらのアドインの詳細や具体的な使い方は、トレーサビリティ 操作セミナーが参考になります。
トレーサビリティに関する情報
Enterprise Architectのトレーサビリティに関するドキュメントや動画デモもぜひご覧ください。
セミナー
「トレーサビリティ 操作セミナー」では、Enterprise Architectのトレーサビリティに関する機能を、操作を通して学ぶことができます。
動画
次の動画では、Enterprise Architectでのトレーサビリティに関連する機能の概要を紹介しています。
また、動画「BPMN 2.0のモデリング」の5分3秒くらいからは、BPMNでモデリングする場合にトレーサビリティがどのように関係するのかを知ることができます。
上記の他、トレーサビリティ 操作セミナーの動画も参考になります。
PDFドキュメント
PDFドキュメント「モデルの追跡(トレーサビリティ) 機能ガイド」にて、Enterprise Architectでトレーサビリティを定義し活用する場合の概要を紹介しています。また、PDFドキュメント「トレーサビリティを活用したモデル構築の例」では、トレーサビリティ機能がどのように役立つのか、どのように使うのかを具体的な例で紹介しています。